やつと初めてあったのは高校2年の頃だった。
1年にも会ってたかもしれないがその頃は全くの他人。
派手な格好と奇抜な髪型、バンドをやっていた彼はオレと気が合うとはとても思えなかった。
彼は学校での逸話をいくつも持っていた。
学校の排水パイプをよじ登り途中で足がすべって3階の高さから手だけで滑り落ち大怪我をしたり、マラソン大会で面白い事をしようと、川の橋を回ってくるコースなのにどぶ川に飛び込んでショートカットしようとし、思った以上に水深が浅く胸に大きな傷を作ったり。
卒業後は親交が深くなり、毎週土日は暇人が集まって遊んでいた。
ある時彼にバイクを貸したら翌日の明け方4時に警察から電話が掛かってきた。
スピード違反で捕まり、しかも整備不良なので持ち主が来ない限り帰れないんだよ~と泣き言を言われた。
しょうがなく始発で警察まで迎えに行き身元を引き受けて朝の街で牛丼食ったりした。
私が一人暮らしする時、引っ越し屋に頼むよりかは安いだろうと、彼と友人もう一人に手伝いを頼んだ。
無事に引っ越しを終えてお礼に焼き肉に連れて行った。
お会計は5万円。
日頃そんなに飲まないくせに「ここのサワーはうまい!」とか言ってガブガブお代わりしたり、「特上カルビって食った事ないんだ~」とか言いながら注文し挙げ句の果てに「あんまり旨くないね」とかw
彼が嫁さんと出会ってからは「なべが会社に行ってる時家貸してよ」とうちに乗り込んできて、オレが帰ってくるまで家でいちゃいちゃしていた。
デート代を浮かそうとしていたのですねそうですねw
そんななか、私が当時の「別れた」彼女からもらったグラスを嫁さんが割ってしまった事があった。
私が風呂に入っている間にそれは起こり、私が風呂を出た時にはあいつが皿を洗っていた。
「ごめ~ん、なべ。グラス割っちゃった~」
あいつは済ました顔で言っていた。
私が烈火のごとく怒り狂っていると嫁さんが泣き出した。
それで全てに気付いた。
身代わりかいなw
自分の小ささを痛感した。
そんな彼は仕事となると異様な才能を発揮した。
商事会社に就職し、そこで商売のイロハを学ぶと元々やりたかったアパレル業界に転職。
そこで会社のナンバー2まで上り詰めあっという間に独立。
その後も順調に業績を伸ばしていった。
私も彼も仕事に対する考え方でよく話をした。
あーするべきた、こーするべきた、それはいい!もらった!などなど、常にお互いがお互いに影響を与えてきた。
本当の意味で仕事の理解者だったのはお互いだけだったと思う。
私に輪を掛けたガンダムオタクで、主にガンプラ・フィギアに執着を見せたw
今日も部屋を見たが、壁一面にガンプラがならびさながらプラモデル屋のようだった。
ガンダムの中で彼の一押し作品は第08MS小隊だった。
かずもんに対する誕生日プレゼントは傑作だった。
Nゲージのコレクションボックスを買ってきて「これがいっぱいになるくらい、とうさんに買ってもらうんだよ」とw
こり屋でせっかちで策略家で愛妻家、子煩悩だった。
完璧主義のくせに面倒になると適当に済まし、面白い事を思いつけばどんな事でも実行した。
何よりも底抜けに私を信じてくれた。
ある日飲みに行くので待ち合わせをしていた。
私が2分遅刻した時、彼は私の家に電話し「なべが待ち合わせに来ない!何かあったんじゃないか!」と血相を変えたそうだ。
私が待ち合わせに遅れる事が滅多になくそれを心から信じてくれた。
思い出なんていくらでも出てくる。
もちろん喧嘩をして口をきかなかった事もあったな。
20年の間に数え切れないほど楽しい事があった。
だけど、残念だけどあいつとの思い出はもう増える事は無い。
今日、あいつの告別式が終わった。
熊のようにワイルドだったあいつが白い小さな骨壺に入りました。
さようなら、わかさ。
また会おうな。